前回の記事では、耳コピするのに欠かせない「キー」についてを見ていきましたが、今回は「スケール」について、詳しく学びます。
このスケールについてを知っておくと、耳コピがよりスムーズにできるようになります。
- 耳コピするのに必要なスケールの知識をわかりやすく解説
- そのキーに対応するスケールの音が、耳コピをする上でどう関わりを持つのかをわかりやすく解説
それでは、Let’s Start!
もくじ
スケール(音階)について
スケールとは、日本語では「音階」と呼ばれます。メジャーキーとマイナーキーの全30種類それぞれにおいて、決められた7つの音を使って作られた音の並びのことです。階段のように並べられるので、「音階」と呼ばれます。
曲のメロディーを作る上で大きな役割を果たしているのが、このスケールになります。
メジャーキーとマイナーキーでも並べ方やスケールの種類が違いますが、ここでは耳コピするのに必要なスケールのみをピックアップしていきますね。
メジャースケール(長音階)
メジャースケールの作り方
メジャースケールは、明るく聞こえる「メジャーキー」のそれぞれのキーにおいて、決められた7つの音を使って作られる音の並びのことです。
よく皆さんが耳にする「ドレミファソラシド」は、メジャースケールの1つです。そして、この「ドレミファソラシド」の並びを基本に、他のメジャーキーでも「ドレミファソラシド」と聞こえるように適用されたのが、メジャースケールになります。
では、実際にどういう並びにすると「ドレミファソラシド」に聞こえるかというと、以下のようになります。
いかがですか?
このように、「全全半全全全半」という並びで「ドレミファソラシド」ができていることがわかります。
上の楽譜では「ド」の音から並べていますが、これを別の音「レ」や「ファ♯」、「シ♭」からスタートしても、同じように「全全半全全全半」と並べれば、「ドレミファソラシド」と聞こえますので、メジャースケールが出来上がるというわけです♪
それではここで、Cメジャーを含む全15種類のメジャーキーのスケールを一覧にして載せますので、見てみてくださいね。
メジャースケール(Cメジャーと♯系)
メジャースケール(♭系)
いかがでしょうか?
弾いてみると全て「ドレミファソラシド」に聞こえるスケールになっています。
マイナースケール(短音階)
それでは、今度はマイナースケールについてみていきましょう。
実は、メジャースケールと違い、マイナースケールには、それぞれのキーにおいて3種類のスケールが存在します。
- ナチュラルマイナースケール(自然短音階)
- ハーモニックマイナースケール(和声短音階)
- メロディックマイナースケール(旋律短音階)
先述の通り、スケールは、実際の楽曲では主にメロディーを作る上で大きな役割を果たしていますが、メジャースケールと違って3種類もあるのはなぜなのでしょうか?
メジャースケールとの違い
メジャースケールとの大きな違いは、スケールの始まりから3つ目の音までを弾いた時に、メジャースケールと比べて「暗く感じる」ことです。
そして、マイナーキーのメロディーに「コード」を付けた時、その曲のキーをより決定づけるための準備として「ドミナント」という要素が必要になります。
その都合に合わせるためにスケールの音の1部分を変えたことで、合わせて3種類ものスケールが出来上がったというわけです。
今出てきました「ドミナント」や「コード」については、別記事で改めて解説していきますが、スケールの音の1部分を変えることについては後述しますね。
それでは早速、3種類のマイナースケールの作り方についてを簡単に解説していきます。
ナチュラルマイナースケール(自然短音階)
ナチュラルマイナースケールは、実はメジャースケールの6番目から始めると簡単に作ることができます。メジャースケールから自然に作ることができるために「自然短音階」とも呼ばれます。
上の画像の場合、Cメジャースケールの6番目から作られたマイナースケールはラの音(A)から始まるので、Aナチュラルマイナースケールと呼ばれます。
そうしてできたスケールを、同じ音から始まるメジャースケールと比較すると、最初の音から3番目の音が暗く感じられると思います。
ナチュラルマイナースケールの6番目、7番目に関しても、同じ音から始まるメジャースケールと比べて暗く感じることはできるのですが、スケールでは、特にこの「3番目」の音が明るいか暗いかによって、その曲のキーが「明るいメジャーキー」なのか、「暗いマイナーキー」なのかの、分かれ道になるのです。
ハーモニックマイナースケール(和声短音階)
先述しましたが、メジャースケールの7番目の音と、そのすぐ上の1番目の音は「半音」になっていますよね。
実はこの場合の「半音」は、その曲のキーの始まりの音を決定づけるための大切な要素の1つになります。
簡単に言えば、この7番目の音と1番目の音が「半音」になっていることにより、「そのキーに落ち着いたと強く感じることができる」のです。
ところが、上のナチュラルマイナーの7番目の音と、1番目の音の音程がどうなっているかというと…
このように、半音よりも広くなっていることがわかります。
実際にこの2つの音を鳴らしてみるとよりわかると思うのですが、「そのキーに落ち着いた感じがあまりしない」のです。
そこで、メジャースケールと同じように、ナチュラルマイナースケールの7番目の音を半音上げて、そのキーに落ち着いた感じを出したのが、ハーモニックマイナースケールなのです。
また、このハーモニックマイナースケールは、コードを作る時の都合に合わせて作られたものとも言えますが、それはまた別記事で解説しますね。
メロディックマイナースケール(旋律短音階)
さて、3つ目のスケールですが…
2つ目に紹介した「ハーモニックマイナースケール」の6番目の音と7番目の音の幅を比較してみてください。
ハーモニックマイナースケールで7番目の音を半音上げたことにより、すぐ下の6番目の音との幅が広くなってしまいましたよね。
そこで、6番目の音も半音上げてみると、以下のようになります。
こうすることにより、初めの音から順番に弾いていっても、滑らかな状態で1番上の音までたどり着くことができます。
こうしてできたのが、「メロディックマイナースケール」になります。
3種類あるマイナースケールの中でも、メロディーラインをより滑らかにするために使われるので、メロディックマイナースケール(旋律短音階)と呼ばれます。
下に「Cメジャースケール」と「Cメロディックマイナースケール」を並べて、比べてみます。
いかがでしょう?
Cメロディックマイナースケールの3番目の音「ミ♭」が、Cメジャースケールの3番目の音「ミ」よりも半音低いことがわかりますよね。これがマイナースケールの「暗さ」の特徴です。
それ以外の音はどうでしょう?
メジャースケールと同じ音で並んでいますよね。
このことから、メロディックマイナースケールは、始めから3番目の音以外は、メジャースケールと同じ並びであることがわかります。
つまり、マイナーで暗く感じるけれど、限りなくメジャースケールに近づけた形が、メロディックマイナースケールなのです。
実際の曲では、このメロディックマイナースケールがよく使われています。
メロディックマイナースケール一覧
それでは、調号がないAmを含めた全15種類のメロディックマイナースケールを以下に載せていきますので、見てみてくださいね。
実際のメロディックマイナースケールは、上行形はメロディックマイナーですが、下降形はナチュラルマイナーになり、スケールの音が違います。しかし、ポップスなどの曲は上行形のみ使われることが多いため、以下では上行形のみを譜例で示しています。
メロディックマイナースケール(Am、♯系)
メロディックマイナースケール(♭系)
調号について
さて…前回の記事でも少し書きましたが、上の楽譜を見てみると、CメジャーやAm以外は、「♯」や「♭」がト音記号の隣に書いてありますよね。これを、調号と言います。
Cメジャースケールの「ドレミファソラシド」を基本にして、C以外の音からスタートして「全全半全全全半」の順番で並べようとすると、「♯」や「♭」を付けなければならない音がでてきます。それらのスケールを五度圏に沿って並べると、だんだん「♯」や「♭」の数が増えているのです。
そこで、どの音に♯や♭がつくかをあらかじめ示しておくことで、1つ1つの音に♯や♭をつける手間を省き、楽譜を見やすくしたのが調号です。上で示したように、メジャーキー・マイナーキーともに使われます。
調号により、楽譜をぱっと見ただけで「この曲は◯メジャー(◯マイナー)だ!」とわかるようになるのです。
耳コピをする際のキーの判定は、スケールの音でも判断できる?
さて、これまで各メジャー・マイナースケールについて色々と見てきましたが、実際に耳コピするときは、これらのスケールがどう関わるのでしょうか?
以前の記事でも書きましたが、耳コピをする際に、その曲が「明るい」のか「暗い」のかをまず判断しますよね。
そこから、メロディーを一部分のみ聴きとり、もしその曲が「暗い」曲の場合、聴き取ったメロディーのうちいくつかの音が「メロディックマイナースケール」の6・7番目の特徴的な音の並びになっている箇所が見つかる時があります。
米津玄師さんの名曲「Lemon」の冒頭部分の場合を考えてみましょう。
この曲の冒頭だけ聴いてみると、「暗い」曲だと感じられると思います。なので、この曲は「マイナーキー」であるとわかりますよね。
この冒頭部分をわたし自身が採譜したものを下に記載します。リズムは多少簡素になっているところがあります。
上の譜面の2段目、ピンクの四角で囲った部分に注目してください。特に2小節目の部分を弾いてみるとわかるのですが、緊張感をもたらすような「半音」の動き方が気になりませんか?
実は、このピンクの四角で囲った2小節目の部分は、メロディックマイナースケールの6・7番目の音が含まれているメロディーラインなんです。その曲のキーの音に落ち着きたい一心で、「半音」の動きをしているとも言えるかもしれませんね。
ちなみに、この曲は「G♯」に落ち着きたい動きをしているので、キーは「G♯マイナー」と判断できるのです。
このように、実際の曲を耳コピする時には、メロディーに含まれているスケールの音からキーを判断することができます。
とはいえ、メロディーラインだけで判断するのはなかなか難しいんです。ここまで読んでいても「難しい…」と感じてしまった人もいるかもしれません。
では、その曲のキーが確実にわかるためにはどうすれば良いのかというと、「メロディーライン」に加え、それに付随する「コード」を聴き取ることによって、確実に判断することができます。コードについてはまた別記事で詳しくお話ししますね。
ただ、スケールを知っておくと、メロディーの耳コピがしやすくなるのは間違いありません。まずは、実際に自分でスケールを弾いてみたりすることをお勧めします。上の楽譜を見ながら、実際に音を出してみてくださいね。
最後に
いかがでしたか?
わたし自身この記事を書いていて、「スケールって本当に奥が深いのだな」と、つい感じてしまいました。
耳コピする上で大切なスケールの仕組みについて、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう♪