元劇団四季で現在は自身の演奏活動や舞台の他、ボイストレーナーとしても活動しています!
今日は自身の経験を元に『プロのミュージカル俳優/女優を目指すために知っておきたいこと』について書いていきます!
私は中学1年生のときにはじめて「レ・ミゼラブル」を観て「ミュージカル女優になりたい!!!」と決意したのですが、困ったことがありました。
家族や周囲にはミュージカルや音楽をやっている人が全くおらず、プロを目指すために何から始め、今後どうしていったら良いのか全くわからなかったのです。
私のように、「ミュージカルをやりたいけど情報が入ってこなくて困っている」という方の参考になればと思いこの記事を書きました。
子供・大人に関わらず役に立つ内容をお伝えしていきますので、ミュージカル俳優を目指す方は是非一度ご一読ください♬
もくじ
STEP1:ミュージカルに必要なレッスンに通おう
ミュージカル俳優を目指すためにまずはレッスンに通うことからスタートしましょう!
まずは芸の技術を磨くことが必須となります。
ミュージカルと言えば「歌・ダンス・芝居」があります。可能ならばどれもレッスンに通うことが好ましいですが、マストなのは「歌とダンス」のレッスンです。
ミュージカルの歌のレッスンについて
ミュージカルをやりたいのであれば、やはりミュージカルに精通している先生に習うことをおすすめします。
ポップスや声楽(クラシック)を教えている先生はミュージカルの曲にあまり詳しくない可能性が高いですし、ミュージカルの発声はそのどちらとも異なるからです。
ちなみに「声楽(クラシック)」とは、オペラで使われるようないわゆる“裏声”のレッスンです。
声楽は発声の基礎ですので、やっていて損はありません。井上芳雄さんや石丸幹二さんなど、音楽大学で声楽をしっかり勉強して大スターとなった方は沢山います!
ですが、最近のミュージカルの傾向として「地声(強い声)」で歌うことが多く求められるようになっています。
「地声」は残念ながら声楽のレッスンでは教えてもらうことが出来ません。
ですのでイタリア歌曲やクラシックの発声しか教えられない「声楽」の先生はなるべく避けましょう。
結論として、ミュージカルは「裏声」と「地声」どちらも使いこなす必要があります。両方を教えられる先生がミュージカルには適しています。
また、歌のレッスンは「グループレッスン」と「個人レッスン」がありますが、内容の充実度を考えると断然個人レッスンがおすすめです。
個人レッスンはグループレッスンに比べると料金が高くなりますが、その分個人に合った的確な指導をしてくれます。
ミュージカルのダンスレッスンについて
続いてダンスのレッスンについてです。
ダンスにも実は色んな種類があります。中でもミュージカルをやる上で役に立つのは、
「バレエ」「ジャズダンス」「シアターダンス」「シアタータップ(タップダンス)」です。
ジャズダンス:バレエの要素を持つ、幅広い範囲を指すフリースタイルのダンス。先生によって大きく色が異なる。
シアターダンス:「ミュージカルダンス」とも呼ばれ、ミュージカルや舞台で活用されるダンス。
この中でまず絶対にやってほしいのがバレエです。
バレエはミュージカルのダンス全ての基礎になります。絶対にやって損はありません!
しかし、バレエでは実際のミュージカルで使われるような振り付けを踊ることは出来ません。少し大変ですがジャズダンスかシアターダンスも同時に習うことをおすすめします。
最後に「タップダンス」ですが、ミュージカルにはタップダンスが登場する作品が多々あります。例えば「メリーポピンズ」や「キャッツ」「クレイジーフォーユー」などなど。
タップダンスはジャズダンスやバレエに比べ習っている人の割合がとても少ないので、出来たらとても重宝されますし、確実に強みになります!
履歴書に特技として書くことも出来ますし、いざ「タップが出来る人を募集」という演目に出会えればかなりのチャンス到来となります!
ミュージカル俳優みんながタップが出来るわけではないからこそ、出来ると強いのがタップダンスです!
ミュージカルに適したスタジオとは?
💡ダンスや歌のレッスンに通う一番の目的はもちろん「技術を磨くこと」ですが、同時に先生やレッスンに通う生徒から「情報を得られる場」にできるとより良いです。
ミュージカル業界はオーディション情報や求められる人材の傾向など、様々な「情報」があまり表立って出回りません。
だからこそ同じ目標を持った人たちが多く集まる場所に身を置き、情報を得ることがとても大切です。この条件が、スタジオにぴったり当てはまるのです。
ミュージカルをやりたい生徒さんが通っており、且つミュージカルに精通している先生が在籍しているスタジオに身を置いてみましょう。
生徒さん同士の会話や先生の何気ないお話の中で自然と得られる情報や発見は必ずあるはずです。
そして「同じ目標を持った人たちと接する」ということも非常に大切です!!
ライバルから刺激をもらうことでモチベーションが上がり、レッスンに張り合いが出てきます。
また、普段から緊張感のある空気の中でレッスンをしているとオーディションにも強くなります。
ミュージカルに出るにはオーディションを勝ち抜いていかなくてはならないので、レッスンであってもオーディションを想定できるような環境だと良いと思います。
○ミュージカルに精通している先生がいるスタジオを選ぶ
○同じ目標を持った生徒がいるスタジオを選ぶ
得意分野を見つける
例えば私は圧倒的に歌が得意でした。ダンスもお芝居も嫌いではなかったのですが、レッスンを始めてすぐに
「私が一番得意なのは歌だ」と確信しました(笑)
この、「一番得意な分野は何か?」をまずは見つけましょう!!
これはとても大事なことです。一番得意なものはおそらく一番好きなものでもあるはずなので、特に重点を置いて確実にしっかり伸ばしてあげましょう!
「これだけでは絶対に負けない!」というものがひとつあると強いです。
まだ見つけられていない方は、焦る必要はありませんが是非探してみてください。
「私はこれ!」というものがあると、プロとしてデビューした後もあなたを表す重要な個性になります!
STEP2:ミュージカルのオーディションを受けよう
レッスンを始めてある程度成長したら、舞台のオーディションを受けてみましょう!
ミュージカルのオーディション情報はどこで手に入る?
「そもそもオーディション情報ってどこで知るの?」と思う方も多いと思いますので、いくつかご紹介していきます!
1:インターネット検索
オーディション情報を紹介しているサイトがあります。
このようなサイトでは比較的規模の小さい舞台の情報を多く紹介しています。
[CINEMA PLANNERS]
https://cinepu.com/cast/theater/
[オーディションプラス]
https://audition.nerim.info/stage.html
[Deview]
https://deview.co.jp/AuditionSearchResult?set_cookie=2
[Web Audition]
https://www.web-audition.jp/search/
また、オリジナルミュージカルを数多く上演している「ミュージカル座」では、公演ごとにほぼ毎回オーディションを開催しています。
オーディション情報はミュージカル座のホームページにアップされます。
メインキャストにはかなり有名な俳優さんも出演することがあるので、非常に良い経験が出来ると思います!
[ミュージカル座ホームページ]
他にも、劇団四季は大体1年に1回のペースでオーディションを開催しており、劇団四季のホームページに詳しい情報がアップされます。
[劇団四季オーディション情報ページ]
https://www.shiki.jp/group/audition/
また、東宝ミュージカルも「レ・ミゼラブル 」「ミス・サイゴン」などの演目は定期的にオーディションを開催しており、こちらも東宝のホームページに詳細がアップされます。
[東宝ミュージカルホームページ]
その他にも「ミュージカル オーディション」で検索するとその時募集している案件がヒットする可能性が大いにあります。
私はかつて1週間に1回は必ず検索していました(笑) このような習慣をつけると、チャンスを見逃しにくくなりますよ!
2:ミュージカルに強い芸能事務所に所属する
芸能事務所に所属すると大きいミュージカルのオーディション情報がもらいやすくなります。
実はほとんどの商業ミュージカル(芸能人が主役を務めるような規模の大きい舞台)は芸能事務所に所属していないとオーディションを受けることが出来ません。
一般公募をせず、芸能事務所に対して公募を出すいわゆる「クローズドオーディション」という形が普通なのです。
多くの方が目指すのは、やはり規模の大きい商業ミュージカルだと思います。
そのために「事務所に所属する」ということは常に考えていた方がいいと思います。
オーディション情報の要・芸能事務所について
私は劇団四季を退団してから2年ほど事務所に所属していなかったのですが、オーディション情報が得られず非常に苦労しました。
四季での経験を活かし大きい舞台に挑戦したかったのですが、フリーだと大きい舞台のオーディション情報は本当に入ってこないのです。
その後事務所に所属し、案件を色々と紹介してくれることに感動しましたし、単純に「オーディションを受けられるチャンスの幅が増えた」ことが嬉しかったです。
事務所に所属する方法としては、
- 事務所に所属するためのオーディションを受ける
- 知人に紹介してもらう
この2つが多いようです。
ちなみに私の場合は、とある演目のオーディションを受けた際にマネージャーに声をかけて頂き、所属となりました。
他にも、私の友人は舞台に出演していた際、観に来ていたマネージャーに声をかけられ所属が決まったそうです。
このように事務所に所属するきっかけは結構人それぞれで、意外なところからお話をもらえることもあります。
ですが、ラッキーなお話を待つばかりでなく「いいな」と思う事務所があったら積極的に所属オーディションを受けてみることをおすすめします!
事務所によっては年齢制限があります。そのような事務所は若いうちに積極的にチャレンジしましょう!
例えば、城田優さんなどが所属する「ワタナベエンターテインメント」などは随時募集をしていますし、「ホリプロ」「東宝芸能」などもたまに大々的な所属オーディションを開催しています。
他にも、事務所のホームページを見ると随時募集をしている場合が多くあります。
[ワタナベエンターテインメント オーディションページ]
https://www.watanabepro.co.jp/other/Audition-list/audition-list.php
ミュージカル俳優として大きな舞台に立つには「芸能事務所に所属する」ことで確実にチャンスを増やすことができます。
「芸能事務所」と一口に言っても色々な事務所があります。特色がそれぞれ異なるので、やはり周囲から積極的に情報を得ることが大事になります。
オーディションを「受ける」ことがとっても大事!
💡”オーディション”というとなんとなく尻込みしてしまう方も多いと思います。
が、例え結果は不合格だとしてもオーディションは受けることに価値があります!!
私も、落ちまくりました(笑)。受かったオーディションの方が圧倒的に少ないです。
ですが、そんなものなのです。
落ちることがあって当たり前なのがオーディションです。
オーディションはミュージカル俳優となるためには避けて通れません。プロとしてデビューした後も、舞台に立つにはオーディションを受け続ける必要があるのです。
まずは結果を恐れず挑戦してみましょう!
オーディションを受ける3つのメリット
【オーディションを受けるメリットその①】向上心が上がる
多くのミュージカルのオーディションは、受験者全員の前で歌ったり踊ったりします。
自分の番じゃない時は他の人のパフォーマンスを見ます。
これはとっても貴重な機会で、すごく刺激をもらえます。
「こんな表現もあるんだ」「この人めっちゃ上手!!」など、色んなことを感じると思います。
例え結果は残念だったとしてもオーディションで感じたこと、もらった刺激は向上心を掻き立てる原動力となります。
今後のレッスンの取り組み方も自然と変わってくるでしょうし、次に向けた課題も見つかると思います。
こうした繰り返しでいつのまにか大きく成長していくのです!
【オーディションを受けるメリットその②】自分のレベルが確認できる
「スタジオ選びのポイント」でも書きましたが、より広い意味で自分の今のレベルを確認することが出来ます。
「まだまだだ…」と感じ落ち込むことも沢山あると思います。
ですが逆に、自分の成長具合を実感できることもあるはずです。
良くても悪くても、今の自分のレベルを認識できるというのは大きな収穫になります。
【オーディションを受けるメリットその③ 】雰囲気に慣れることができる
先ほども言った通り、ミュージカルに出演するためにはオーディションを受け続けるしかありません!
これは初心者もベテランも同じです。
ですので、良い意味で「オーディションに慣れる」ということは今後のためにも必要になってきます。
私自身、一番最初に受けたオーディションはとっても緊張して何を歌ったか覚えていないほどでした。足がガクガク震えたのを覚えています!
ですが、何度かオーディションを受け続けているうちに自分なりの集中力の高め方や、リラックスの仕方がわかってくるようになりました。
何より「オーディションの空気感」というものを何度も体験しているので、必要以上にストレスを感じなくなったのです。(もちろん緊張はしますが笑)
それが結果に繋がるかはさておき、自分のベストパフォーマンスが発揮出来るようになりました。
ベストを尽くしたのだから、結果は不合格でも「しょうがない」と思えますし、あまり自分を責めずに済むようになりました。
オーディションでガチガチに緊張して今まで積み上げてきたものが出せなかったら誰でもとても悔しいと思います。
オーディションでより良いパフォーマンスをするためにも、オーディションの場数を踏むということは非常に大事なのです。
いかがでしたか?
「オーディション」は”合格”か”不合格”ということだけで考えがちかもしれませんが、実はそうではありません!
無駄になるオーディションなんて一つもないので、自信がなくても是非積極的に受けてみてください!
そこから得られるものは確実にあります。
STEP3:オーディションを受けて、ミュージカルに出よう
東宝ミュージカルや劇団四季など、大きな舞台に立つことが目標という方は多いと思いますが、これらのオーディションにすぐ合格することはなかなか難しいです。
挑戦はしつつも、まずは比較的規模の小さい舞台のオーディションもどんどん受けてみましょう!
まずは「舞台に立つ」その一歩が大切です!
出演してみよう
まずは小さな舞台でも出演してみましょう!
「経験は力なり」という言葉がある通り、レッスンではなく現場でしか学べないことは山ほどあります。舞台の規模に関係なく、舞台に出演して得られるものはたくさんあるのです。
なにより大事なのが、出会える「人」です。
舞台に出演すると、大勢の人に出会うことができます。そしてこの「人」が次のチャンスをくれることが多々あるのです!
例えば演出家やプロデューサーに「次の公演も出てみない?」と誘われたり、俳優仲間に「次のライブで一緒に歌おうよ!」と誘ってもらえることもあります。
先ほども言ったように、ミュージカル業界では情報を得ることがとても大切です。多くの人と繋がり、歯車を回し始めることがとにかく重要なのです!
人と繋がっていくことで情報も入りやすくなり、チャンスの数を増やすことが出来るはずです。
もちろん、そう言った嬉しいお話を頂くためには、真摯に稽古に取り組み、努力を続けることが欠かせません。
一見、自分の目標とはかけ離れている舞台に思えても、収穫は必ずあります。
お金とノルマの注意点
とはいえ、小規模な舞台ならではの注意点があります。
それは「ノルマ」そして「お金」についてです。
ミュージカルで言う「ノルマ」とは「売らなければならないチケットの枚数」です。
舞台によってはこのノルマが非常に多いことがあります。
そして気を付けたいのは、ノルマ分のトータル料金を事前に支払わなければならないケースが多いのです。
お客さんに売る前に、一度全額立て替えをするということです。
公演が終了するまで支払いを待ってくれるところもありますが、稽古が始まってすぐの段階で支払いを求められる場合も多くあります。
チケットは安くても4.5千円ですから、例えノルマが10枚だとしてもそれなりの金額になります。
ノルマに関してはオーディションの募集要項に「ノルマ有り」「ノルマ無し」と書いてありますので事前に必ずチェックしましょう。
「ノルマ有り」の場合、枚数がわからず不安な場合は問い合わせをしても良いと思います。
- ノルマ分の人を呼べる見込みがあるか?
- 自分の経済状況は余裕があるか?
一度自分と相談してから申し込みをしましょう。
続いて「お金」に関してです。
こちらも規模の小さい舞台の場合は特に注意が必要です。
まず、募集要項に「ギャラ有り」もしくは「チケットバック有り」と記載があるか確認しましょう。
「ギャラ有り」という場合は、多少はお金がもらえますが多くは期待できません。
連日稽古に通うだけでも交通費や食費がかかりますので、プラスマイナス0になったらいいな、ぐらいで考えておくといいと思います。
また、ギャランティがもらえるのは公演が全て終了した後なので、稽古期間はある程度貯金がないと厳しいです。
「チケットバック」とはチケットを1枚売るたびに得られる収入です。
ですがこれも多くて1枚1000円程度、少なくて数百円です。チケットをたくさん売れば、その分自分の収入も多くなるという仕組みです。
ないよりはあった方がいいですが、『ギャランティはチケットバックだけ』という場合も多くあります。
やはり自分の経済状況と一度相談してから判断することをお勧めします。
また、「チケットバック有り」「ギャラ有り」のどちらも記載が無い場合はギャランティは無しと思いましょう。
このように、小規模な公演では金銭面がシビアな現状があります。
お金やノルマの問題は無理をすると精神的にも大きな負担となりますので、必ず事前に条件を確認しましょう!
どうしても条件が難しい場合は見送る勇気も必要です。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました!
色々なことをお伝えしましたが、ミュージカル俳優になるために一番大事なことはやはり芸を磨くことです。
どんなに人脈が出来ても、情報が入ってきても、実力がなければ舞台に立ち続けることは出来ません。
人脈や情報、事務所などは道しるべとして非常に大切ではありますが、核はやっぱり「芸の実力」です。
こればっかりはごまかすことは出来ません。
日々のレッスン、努力、向上心がシンプルに一番大切なのです。
日々の努力がもう一歩上に登れるようなきっかけを、この記事で何か見つけてもらえれば嬉しいです!
次回の記事はオーディションに必要な宣材写真や課題曲について書きたいと思います!
お楽しみに(*^^*)